GVA TECH株式会社(ジーヴァテック、以下GVA TECH)は、「法とすべての活動の垣根をなくす」を掲げ、AIを活用して法律業務を効率化するリーガルテック企業です。2017年1月に設立され、2024年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。従業員数は69名(同社公表)です。同社のGenspark導入は、代表の山本氏が個人的に使い始めたことをきっかけに広がりました。導入の経緯と現在の活用状況を説明しているのは、取締役・CLOの康 潤碩(Yunso Kang)氏です。

Key Points
  • 単一AIへの依存が視野を狭めるという、法務業務ならではの構造的な課題
  • 複数のAIモデルを「選べる」「統合できる」プラットフォームを選ぶ判断軸
  • 経営層の個人利用を起点にした、自然な社内展開のパターン
01導入前の課題

単一AIの限界と、ツールを行き来する手間

導入前のGVA TECHには、3つの課題がありました。

ひとつは、社内で公式に利用していたAIツールが1種類のみで、単一のAIでは対応できない領域やタスクが多かったことです。「その1本のAIチャットだと、やっぱりできないことっていうのが多すぎた」と、康氏は振り返ります。

もうひとつは、複数のAIを使い分ける際の手間とストレスです。それぞれのアウトプットをコピーしてドキュメント化し、統合して別のAIに入力し直すという作業が、業務のたびに発生していました。

さらに、1つのAIモデルだけに頼ると視点が偏り、思考の視野が狭まりがちになるという懸念もありました。リーガル業務では、法令調査や契約書チェックのように、多角的な検討が求められる場面が多いため、この点は無視できない課題でした。

02導入の決め手

「選べて」「統合できる」こと

導入のきっかけは、代表の山本氏が個人的に使用を始めたことでした。当初はスライド作成などでの利用でしたが、複数のAIモデルを選択できる点と、それらをひとつのプラットフォームで統合できる点が、社内へ広げる決め手になりました。

康 潤碩氏(取締役・CLO)
「モデルを選んで、GeminiであったりClaudeであったりGPTであったり選べるっていう部分で、選択肢が広がっていくのが大きかった」

AIツールを使い分ける際に課題だった「コピーして・統合して・別のAIに入力し直す」作業が、ワンクリックでのモデル切替と自動統合で解消されることが、実務での受け入れやすさにつながりました。

03導入プロセス

代表の個人利用から社内の実務へ

導入は、代表の個人利用から社内へ自然に広がりました。現在は、経営層の意思決定から現場のリーガル業務まで、幅広い場面で使われています。同社の主な活用は、次の4つです。

事業計画の策定・検証

事業の前提条件やExcelデータをGensparkに投入し、現実的な勝算とボトルネックを洗い出して資料化します。「Excelの数値データと事業概要だけ、SuperAgentに放り込んで、現実的な勝算だったりボトルネックがどこにあるのか、かなり洗い出してもらった」と康氏は説明します。

契約書チェック・リスク評価

契約書から法的リスクを抽出し、高・中・低のリスクレベル評価、対応策の検討、修正案の作成までを一連のタスクとして処理します。

法令調査

新規事業や施策に関わる法令を、出典付きの検索で広く収集し、ファクトチェックまで行います。日本だけでなく、世界の法令にも対応しています。法令調査におけるAI検索の価値について、康氏は次のように話します。

康 潤碩氏(取締役・CLO)
「弁護士ですけど、日本の法令を全部知っているわけではない。AI検索は、いろんな情報をソース付きで広く取ってきてくれて、かつファクトチェックができる」

社内マニュアルの作成

独自の判断基準に基づくOK/NG例などを含む詳細なマニュアルを、AIドキュメント機能で文字化・資料化します。

04成果

「業務の進め方の変化」

削減率や時間短縮などの定量的な成果は公表されていません。以下は、同社が説明する業務上の変化と評価です。

  • 情報収集・リスク評価の迅速化:エージェントがタスクの細分化も分析も肩代わりするため、これまで時間のかかっていた調査・評価の工程が速くなりました
  • 論点出しの穴がなくなる:複数のAIモデルのアウトプットを比較・統合することで、単一モデルでは見落としがちな視点を拾い上げられます
  • ツール行き来のストレス軽減:コピー&ペーストによる情報の受け渡しがなくなり、ひとつの場所で作業が完結するようになりました
  • アウトプットのボリュームと質の向上:AIドキュメントで作成した成果物は、書き上がったもの自体の出力もボリュームも質も、従来と「全然違った」と、康氏は述べています

数値化された効果ではなく、業務の進め方そのものが変わり、それが「助かっている」「ストレスが軽減された」という評価につながっているのが、この事例の特徴です。

康 潤碩氏(取締役・CLO)
「1個のモデルだけでやったときは、視野が少し狭まりがち。各モデルを選んで出すことで、それを統合していく。より穴のない論点出しができる」
「『よしなに』やってくれるのが一番いいポイントです。一般AIだと『よしなに』って言われてもどうしようもならないところが、『よしなに』やってくれるのが非常にいいポイント」
05他社が学べる3つのポイント

AI活用が変わる3つの論点

GVA TECHの事例から、法人でのAI活用を検討する他社が学べる点は3つあります。

ポイント1:モデル選定の軸は「選べる・統合できる」に置く

単一モデルへの依存は視野を狭めます。複数のモデルを比較・統合できる環境は、法的リスクの検討のように多角的な判断が求められる業務で特に有効です。AI選定の評価軸は、単一モデルの性能だけでなく、複数の視点を取り込めるかが重要になります。

ポイント2:「細かい指示」ではなく「背景の丁寧な説明」で実用になる

逐一プロンプトを書く手間は、エージェントが背景を読み取ってタスクを細分化してくれることで軽減されます。「よしなにやってくれる」という体験は、専門知識を持つ担当者がAIを使い続けるうえで大きな利点です。

ポイント3:導入は経営層自身の実利用から始まる

同社では、代表自身が個人的に使い始めたことが導入の起点でした。経営層が実体験として利便性を理解することで、現場への展開は自然に進みます。「上からの命令」でも「現場への丸投げ」でもない、経営層の実利用が起点になる導入は、定着率の面でも有効です。

※本事例は2026年9月時点の情報です。