株式会社Hakuhodo DY ONEは、博報堂DYグループのデジタルマーケティング会社です。広告運用、データ分析、デジタル施策の企画・制作などを通じて、クライアント企業の事業成長を支援しています。従業員数は3,290名(2026年4月1日時点、同社公表)です。Gensparkの導入は、加藤氏が所属する本部の取り組みとして始まり、現在は全部門で少なくとも1人がライセンスを保有するまで活用が広がっています。導入の経緯と現在の活用状況を説明しているのは、得能 和也氏(テクノロジーR&D本部)と加藤 卓也氏(エンゲージメントソリューション本部 マネージャー)です。
- クライアント向け提案資料作成の負荷を、法人セキュリティ要件を満たしたまま解消
- 「中央集権的な管理」を軸にAIを選ぶ、法人導入の前提条件
- 「Genspark推進プロジェクト」による組織的な利用定着の仕組み
資料作成の時間コストと、安全に使える環境の不在
導入前のHakuhodo DY ONEには、2つの課題がありました。
ひとつは、クライアントへの提案資料や内部発表資料の作成に、多大な時間と労力がかかっていたことです。営業をはじめ、企画・提案のたびに資料をゼロから作る工程が、現場の大きな負担になっていました。
もうひとつは、AIツールの安全な利用環境の不在です。ChatGPTの登場以降、同社は法人として安全に業務活用できるAI環境を模索していました。具体的には、「AIのデータ学習に利用されないこと」「生成物の権利がユーザーに帰属すること」といった法人セキュリティ要件と、個人が個別に申請・登録すると利用状況を管理側で把握できなくなるという属人化のリスクでした。
管理のしやすさと法人要件への適合
導入の決め手は、法人プランでの管理のしやすさでした。同社は、管理者がアカウントの追加・削除・入れ替えを容易に行える「中央集権的な管理」ができることが、会社として使っていくための前提だったと説明しています。
「中央集権的に管理をするということができていないと、会社として使っていくのは厳しいかなと思っていた」
あわせて、先行利用したメンバーからの評価が高かったことも、決め手のひとつです。本格導入への後押しになったのは、試験導入の段階で共有された、次のような使い勝手の評価でした。
「1行ないし2行の指示で、自分の意図しているものがドキュメントとして生成されていく」
「Genspark推進プロジェクト」と本部長の先頭利用
導入の展開にあたって同社が特徴的だったのは、推進の仕組みを組織的に作ったことです。まず、加藤氏の所属する本部では、本部長(熊田氏)が自ら先頭で使い始めました。便利だと感じた本部長の姿が、約20名のフロントメンバーへ一気に展開する下地になったと、同社は説明しています。
そのうえで、本部内に「Genspark推進プロジェクト」を立ち上げ、週次でヒアリングを実施しました。それぞれのメンバーがどう使っているか、どれだけの時間を削減できたかを共有することで、利用の動機付けを行ったのです。この取り組みには、どれだけ便利なツールでも、使ってもらう仕組みを作らなければ広がらないという、加藤氏の問題意識がありました。
「どれだけ便利でも積極的に使ってくれる人って一握り。そこをどうやって使ってもらおうかと考え、推進プロジェクトを立ち上げた」
利用は本部から全部門へ広がった
導入の成果は、同社によると「利用の浸透」の指標です(測定された業務成果の数値ではなく、同社が説明する浸透の状況です)。
- 1/3加藤氏の本部内で日常的に利用しているメンバーの割合
- 3倍クレジット消費量が数ヶ月で増加した倍率
- 全部門少なくとも1人がライセンスを保有する状態へ拡大
活用範囲も広がっています。営業(クライアント提案資料のアイデア出し・構成作成)、マーケティング、クリエイティブ(成果物のアイデア出し・提案資料用の画面モックアップ作成)、開発、経営管理(数字の可視化・分析)と、部門横断的に使われています。得能氏は、提案資料をPowerPoint形式で出力できることが導入のポイントになったと説明しています。
展開は「管理」と「推進の仕組み」で決まる
Hakuhodo DY ONEの事例から、法人でのAI導入を考える他社が学べる点は3つあります。
ポイント1:法人導入の前提は、管理のしやすさである
同社は、中央集権的なアカウント管理ができないツールでは「会社として使っていくのは厳しい」と判断しました。利用者側の便利さだけでなく、管理者側の統制のしやすさが導入の前提条件になるというのは、法人導入に共通する論点です。
ポイント2:定着には、推進の仕組みが要る
便利なツールでも、積極的に使い始める人は一握りです。同社は「Genspark推進プロジェクト」と週次ヒアリングで、使い方の共有と時間削減の可視化を続けました。利用の広がりは自然には起きず、推進の仕組みで作られるという点が重要です。
ポイント3:現場が先頭で使い、経営層が見せる
本部長が自ら先頭で使い始めたことが、約20名のフロントメンバーへの一括展開の下地になりました。利便性を言葉ではなく実際の使い方で示すことが、展開のスピードを決めます。
※本事例は2026年9月時点の情報です。